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サード・セクターを旧来のサード・セクターから独立して概念化したことである。日本のNPO法案においてつねに話題になるのが、法人格を付与する団体の性格である。政府の政策について反対の立場をとる運動体についても認証するかという点が争点となっており、法案作成にあたって、政党間で微妙な差がある。すなわち、新サード・セクターまで含めることの妥当性である。レヴィットはすでに20年以上前に、サード・セクターの性格が一様ではないことを指摘していたのである。

 

(3) 90年代の動向
レヴィット以降、欧米においては、多くの市民セクターにかんする研究業績がある。その代表の1人がP.ドラッカーである。彼の研究業績はおびただしい数におよぶが、市民セクターに関連するものだけでも90年前後以降数冊が翻訳されている11)。なかでも代表作は『非営利組織の経営』であろう12)。同書では、成人の2人に1人が非営利組織で平均週5時間働いているというアメリカを対象として非営利組織の経営(マネジメント)について論じている。彼の考えには、社会的ニーズの多様化に対して政府の能力はますます限界に近づきつつあるという前提があり、それにともなって、ますます非営利組織の役割が高まるという確信がある。その際、この種の組織にも経営感覚が必要となり、同書では、成果をあげるためのマネジメント、人事、人間関係等についても考察している。
この他、近年矢継ぎ早にNPOにかんする業績をあげているのが、L.M.サラモンたちのグループであろう。とりわけ、NPOの比較研究を試みた研究は興味深い13)。この研究は、ジョンズ・ホプキンス大学における共同研究であり、12か国とくにアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ハンガリー、日本の7か国(その他、ブラジル、ガーナ、エジプト、タイ、インドの5か国)については、実証的なデータを収集している。ここでは、各国間の相違について紹介しておこう14)。これによれば、
・アメリカの非営利セクターは全雇用の6.8%をしめ、絶対数、割合双方においてもっとも大きい。
・フランス、ドイツ、イギリスの非営利セクターは背景が異なるにもかかわらず、その規模は同様で、きわめて大きなものとなっている。これらの各国において非営利セクターは全雇用の3パーセントから4パーセント、サービス業にかぎると雇用の9%から10%をしめている。
・ハンガリーでは、5年前には非営利セクターがほとんど存在していなかったが、現

 

 

 

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